インタビュー

構想したビジネスプランは「開発途上国における流通事業のデジタル化」。

修了生

近藤 紘嗣

KONDO HIROTSUGU

東京大学大学院 農学生命科学研究科を修了後、日本工営株式会社へ入社。開発途上国の農家の貧困解決を軸に、農業技術の普及やインフラ整備などのODAを担当。現在はデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて開発コンサルタント業務に従事。

イノベーター養成アカデミーを選んだ理由

国際開発という公共的な支援ではない、ビジネス的なアプローチという『手札』を増やす。

私は仕事で開発途上国の開発援助に関わっており、農業分野で政府機関に対するコンサルティングを行っています。
ただ、開発途上国の公共機関というのは予算・人員・ノウハウというような内部事情から、適切な提案があっても具体化できないという現実がありました。
そこで、公共的な支援という立場ではなく、アグリビジネスを自身で立ち上げることで貢献するという『手札』を増やすことを目的に、出願を決めました。

本アカデミーでの学びと経験

集合研修での「個別指導」、年3回の「事業計画発表」は、他では得られない貴重な機会。

一年間のプログラムを通して最も印象に残ったのは主任教授の三村先生による集合研修です。
土日を利用した集中的な指導ではアウトラインの説明だけでなく、個々のビジネスの課題に対するアドバイスや解決策の提示もあり、インプットとアウトプットを兼ねた非常に有意義な時間だったと感じています。
コンサルティング業務を長年ご経験されている方とビジネスプランについて議論できる機会が設けられていることは、事業開発を考えている人にとって大きな魅力だと思います。
メンターやナビゲーターとの壁打ちや、発表会における評価員の方々によるビジネスモデルに対するフィードバックがあることも多様な視点から気付きを得られる重要な機会でした。

アカデミーの魅力

アカデミーの魅力はカリキュラム全体の充実さ。PoCにおいては活動費助成を活用した現地住民との連携が軸となった。

他の人にアカデミーを勧めるとしたら、やはりカリキュラムの充実さを強調したいです。たとえば、一期生の方々は本当に多様で、農業に詳しい方もいれば、ほとんど触れたことがない方もいました。また、ビジネススキルの有無もさまざまでしたが、そうした幅広い背景の方に対しても対応できる体制が整っている点は、大きな魅力だと思います。
農業に詳しくなくても、ビジネスに触れたことがなくても、入学すればしっかり育ててもらえる環境があるという安心感があります。

ご自身のビジネスアイデアの仮説検証において、アカデミーのサポートは受けられましたか?

私は途上国を対象としたビジネスを構想していたので、実際に現地で調査をすることが理想的でした。活動費助成制度を活用することで、現地で直接、住民の方々の声を聞くことができたのは非常にありがたかったです。もしこの制度がなかった場合、現地の方とオンラインで繋がることを選択をしていたと思います。ですが、実際に現地に足を運ぶことで、オンラインでは出会えなかったような方々とも繋がることができました。最初からオンラインだけで繋がるのと、直接知り合った上でのオンラインでの繋がりとでは、関係性の深さも得られる情報の質も全く違います。

新規事業開発に対する意識の変化

起業や新規事業開発で最も重要なのは「起点」そのものではなく「アプローチ」

三村先生の講義を通じて特に印象に残っているのは、「イノベーションは突発的なアイデアから生まれるものではなく、アイデアを練り上げていくプロセスこそが重要だ」ということでした。
元々アイデアはあったものの、「開発途上国」という特殊な状況をテーマにしていたこともあり、周囲に相談する機会をあまり作れずにいたんです。でも、仮にビジネスの対象とした国についての専門家でなくても、相談することで得られる気づきは多い。もし、最初のアイデアとまったく違う形になったとしても、自分が達成したいビジョンを実現するためには、リーンにアイデアを回していくことが必要です。課題や目的地という「起点」は持ちつつも、柔軟にアイデアを試行錯誤していく、その姿勢が大事なんだと思います。

アグリビジネスという領域についても印象は変わりましたか?

農学部を卒業していて、もともと途上国支援に関わる事業も行っていたので、他の方が感じるような農業とビジネスのギャップはもしかしたら大きくないかもしれません。ただ、それでも入学前と修了後で比較すると、アグリビジネスに対する印象や意識は変化したと思います。
率直に言うと、アグリビジネスは依然として難しいと感じています。特に私が対象としていた途上国では、そもそも食にお金をかける文化が根付いていないことも多く、市場規模が非常に小さい。その中で課題解決を目指しながらも、ある程度の収益を上げていくというのは、他業界に比べてハードルが高いと思います。マーケットサイズを増やすのも正直難しい。人口に左右されるし、消費者の食に対する価格感度が非常に高い。野菜の値段が少し上がっただけでも、すぐに嫌悪感を示すこともあります。ですので、アカデミーが目指しているように、イノベーティブなアイデアで真に社会課題を解決し得るかを検証して事業化しなければ、自分のアグリビジネスが仮にうまくいったとしても、他の食関連事業者とパイの取り合いになり、ゼロサムゲームに陥ってしまう恐れがあると感じます。
特に途上国支援では「こちら側が支援する」という構図になると、ビジネスとしては儲かりにくい。その点は非常に大きな課題です。とはいえ、逆の立場から見れば、生活へのインパクトは非常に大きく、金銭的な面だけではない価値があるとも言えます。なくなることのない重要な領域であり、消費者も生産者も喜ぶ構造を作ることは理想的だと思います。

その難しさは「市場の失敗(market failure)」という概念が近いかもしれませんね。道路や水道、電気といったインフラは、通常の市場原理に任せてもうまくいかないからこそ、公共事業として整備されています。

そういう意味でも、農業は単なるビジネスではなく、より公共性の高いインフラとしての一面があるのではないかと再認識しています。 ただ、その一方で、農業を嗜好品や体験価値と結びつけて付加価値を高めるような動きは非常に重要だと考えています。「意味を変える」あるいは「土俵を変える」というようなアプローチですね。生産面での魅力や、果物のような商品性の高いものとのバランスなど、まだまだ考える余地は大きいです。 特に発展途上国においては、もっと基礎的なインフラや流通面の整備が優先課題になることもあるので、それぞれの地域の文脈に応じたアプローチが求められていると思います。

当アカデミーで学んだ「新規事業開発の手法」について再現性があると思いますか?

この一年間で、事業を考えるための「型」や「ハウツー」はしっかり学べたと感じています。今回のアイデアはまだ事業化できていませんが、たとえうまくいかなかったとしても、今後また新たな課題や問題意識が生まれたときに、今回学んだ手法を使って事業化を考えることは可能です。
理想を言えば、現在の仕事の中でこうした事業が生まれれば、生活の軸と新規事業の目的が重なって、よりスムーズに実行できるのではないかとも感じています。

今後の展望

今は現職の開発援助の仕事を続けつつ、それと並行して、いわゆるプロボノという形で、副業的に現地の農業課題に取り組むような団体に関わらせていただいています。具体的にはアカデミーでやっていたビジネスプランを活用する形で、現地で事業化の可能性を探っているような状況です。今後の展望として、ゆくゆくは本業にしていけたらいいなという想いもあります。
開発途上国を対象としたビジネスでいきなり起業するのはリスクも大きいですし、やはり公共セクターでの限界を感じたことが出願理由でもあったので、最終的にはビジネスを通じて社会課題にアプローチできるような形で、自分のキャリアを広げていきたいです。

出願を検討されている方へのメッセージ

  • 既に社会人として、ある程度経験を積んでいたこともあり、「今さら学校で学ぶことがあるのか」とか、「他のメンバーとレベル感が合うかな」といった不安が正直ありました。ただ、実際に入ってみると、それぞれバックグラウンドは違っても、同じような思いや問題意識を持っている人たちが集まっていて、すごく刺激的でした。
    なので、成し遂げたい想いや解決したい課題があるなら飛び込んでみてほしいです。必ず得られるものがあると思いますし、仮にすぐに起業しなかったとしても、自分の視野を広げたり、次の一歩を踏み出すためのきっかけにはなると思います。

    ※記事の内容はインタビュー当時のものです

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