インタビュー

起業という枠を超えて –「勝てる関わり方」を設計して、格好いい農業ビジネスの現場へ接続する

在学生

永山 天楽

NAGAYAMA AMARA

英国立バース大学経営学部を卒業後、司法書士行政書士事務所や人材紹介会社での勤務を経て本アカデミーに入学。
現在は茨城県の農業法人で栽培や出荷に携わる傍ら、一般社団法人ナフィールドジャパン(世界最大の農業者ネットワークNuffield International Farming Scholarshipの日本事務局)の一員として活動。

イノベーター養成アカデミーを選んだ理由

座学だけじゃなく、最初から“現場と事業”に触れられる

前職では農業とは無関係の、人材のヘッドハンティングをしていました。様々な人の人生に触れキャリアを繋ぐ仕事は楽しみつつも、もっと“物質的なこと”——普遍的な価値のあるものを作る世界に関わりたいと思ったんです。そこで直感的に行きついたのが農業でした。
ただ、農業の領域に飛び込むには「何か学ばないと」と漠然と探していて。

座学も実践の学びも自分の興味に応じてできる環境を求めていた時に、アカデミーを知り、プログラム設計が自分に合いそうだと感じました。
「いずれは自分のビジネスを起こしたい」という思いがあったからこそ、学びが活動に直結する環境に飛び込む決断ができたと思います。

本アカデミーでの学びと経験

未完成なアイデアも歓迎され、自分の“煮詰め方”が手に入る

私はいま、在学期間を延長して2年目後半でPoCを進めている段階なんですが、このフェーズの学びはかなりケースバイケース。人によって課題も状況も違うから、進め方の正解があるわけではないんですよね。
だからこそ価値を発揮するのが、壁打ちやメンタリングです。まだ煮詰まっていない状態の材料でも、相談すると、主任教授やナビゲーターが一緒に整理してくれる。たとえば、品目としての魅力から入った話でも、産業構造(寡占化の進み方)や輸出のハードル、栽培の病害リスクなど、現場に即した論点が返ってくる。個人的に象徴的だったのは、主任教授の講義で扱われた「バナナの病害」の話です。バナナを入り口に、「海外で栽培して生鮮品として輸出する」と考えた瞬間に立ちはだかるハードルにリアルな重みで向き合えました。調べればどこかに情報はあるかもしれないけれど、スタートポイントとして“現実の解像度”が一気に上がる感覚がありました。

視点のレンジの広げ方や、思考を“詰める”アプローチがビジネスにおいて武器になる

オンラインの講義で印象に残っているのは、濵田隆徳先生(東京農工大学 学長特任補佐)の『食と環境のトレンド』という世界の農業情勢を扱った回です。いろんな事象がどう紐づいて“世界的なトレンド”をつくっていくのか、という見方がすごく面白かった。空間軸・時間軸の視点をマクロに一段引き上げてもらえた感覚があります。

一方で、自分のプロジェクトと向き合う上で今一番効いているのは、集合研修での対面の壁打ち。濃い時間で正直すごく疲れるんですけど、思考の詰め方、問いの立て方、判断の軸の置き方——そういう「型」そのものが実になっていく感じがします。将来何をするにしても、この“詰めて煮詰めるアプローチ”は武器になると思っています。

アカデミーの魅力

自分の興味があることに専念できる。その高い自由度の中で決断力を鍛えられる。

アカデミーの魅力は、「興味を持つこと自体を肯定してもらえる」ことです。
これって意外と日常では得づらいんですよね。しかも肯定したうえで、ビジネスとして「じゃあどう詰めていこうか」に進む。
入学前は、起業や社会課題解決の形はこうあるべき、みたいな硬い考えがありました。それに対して様々なアプローチを実践されてきた講師の方や、いろんな価値観やバックグラウンドを持っている仲間がいるのは大きくて。ここで会えるいろんな方の産業知識、問題意識、創造力、ビジネススキームを少しずつ吸収して自分の手札を増やせている気がします。

ただ、自分の興味に専念できる自由さは同時に厳しくもある。多くの選択肢の中でメリットもデメリットも整理してもらえるけれど、決断して責任を持つのは自分。この「自由のしんどさ」を、まだたくさんの時間・お金の投資をしていない段階から体感できるのは、重要な学びだと思っています。

活動費助成制度はどのようにご活用されましたか?

東ティモール(東南アジアの島国)に二ヶ月間滞在してPoCを行いました。開発途上国の生鮮流通の実態を知りたいという思いがあり「現地に行ってみないと分からない」と感じていました。海外なので助成の対象になるのか不安もありましたが、事務局に相談したところ背中を押してもらえました。

現地では農家、物流、資材会社、NGO、政府系機関などを、人づてに紹介してもらって訪ねてインタビューしました。市場で流通を観察したり、産地から野菜や果物が運ばれるトラックに同乗させてもらったりもしました。これによって、インターネット上の情報だけでは絶対に得られない一次情報が手に入りました。
もう一つ大きかったのは、「その場の人たちにとって何が役に立つのか」を対話で聞けたことです。取るに足らないように思える声や、五感で感じる気候・生活・農作物の情報に、必ず需要の芽がある。その芽をどう拾って、どう形にしていくかを考える入口になりました。

在学期間の柔軟性と、厚いネットワーク。“続けられる仕組み”がある。

あと、最大三年間在籍できるのはありがたいですね。二年目となる今年で修了しようとは思っていますが、ペースは人によって違うので、必要なタイミングで有償サポートが受けられるフレキシビリティには助かってます。

AFJのネットワークも大きかったです。入学して一ヶ月くらいの時に事務局からナフィールドジャパンの仕事を紹介していただいて、そこから今働いている農場にも繋がりました。アカデミーの枠を超えて、仕事や現場の相談先が増える。情報のハブに接続できる感覚があって、心強いです。

今後の展望

まずは最終発表まで走り切りたい。在学期間を延長したのは、事業計画策定において、ちゃんと自分がこのプログラムで集めた興味や理想、好奇心に最後まで向き合いたいから。走りきろうとも、なあなあで終わらせようとも、自分に返ってくると感じています。

他にも、来年3月にはナフィールドジャパンが主催する農業の国際カンファレンスが控えているので、その運営をしっかりやり遂げたい。AFJにもらったご縁のこの活動は、起業やビジネスではなくとも、農業の面白い部分に関われることを感じられる場所です。いろんな国の農業を見て、人や情報とつながり交流することで、自分が格好いいと思う農業がアップデートされていく感じがしています。
この先も、自分が面白い・格好いいと感じる農業の在り方を追いかけながら、少なくともこの先10年とか15年はアグリビジネスの世界で挑戦を続けたいと思っています。

出願を検討されている方へのメッセージ

  • 自分の本当に興味のある課題を掘り続ける時間と、壁打ち相手と、応援してくれるネットワークがいっぺんに手に入るのは、すごく贅沢な環境だと思っています。
    一方で、自分がやらなくても誰も困らない。サボりたければサボれる。でも、やった分だけ自分に返ってくる、という自由の厳しさがあります。
    “想い”だけでは進まない。自分の日常の何を切り捨て、それを投資し代わりに何を得たいのか。そこが定まるほど、この環境の価値は強烈に効いてくると思います。

    『起業家』として走る以外にも、繋ぐ側、広める側、支える側、サプライ側——関わり方はいくつもある。自分が選んだ関わり方に向かって、現実で戦える手札を得られました。

    ※記事の内容はインタビュー当時のものです

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